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​福長弘志 Fukunaga Hiroshi

二紀会委員

​二紀会広島支部長

福長弘志 墟 2023 P200号

題名 墟(あと)  制作年2023年 大きさP200号 キャンバス・アクリルガッシュ

 

・モチーフについて

2009年にフランスのオラドゥールという廃墟を訪れて衝撃を受け、それ以来、炭をモチーフに描いています。

1944年6月10日、オラドゥールの村人はナチス武装親衛隊によってほぼ全員が虐殺され、村が焼き払われるという残虐非道な事件がありました。男性は6つの納屋に押し込められ、脚を撃たれて動けなくなった体の上に藁を積まれ、197人が納屋ごと燃やされてしまいます。続いて、教会の中に連れ込まれた女性240人と子供205人は、教会の中で焼き殺されてしまいました。その後、証拠隠滅のために村全体が焼かれ、平和だった村は、一日にして廃墟になったのです。以来80年間その廃墟の村は保存され、時が止まったように過去の蛮行を今に伝えています。

以前から、ヒロシマをどのように描くか模索していましたが、オラドゥールの廃墟が「これを描け」と肩を押したように直感し、「燃やされた後に残るもの」というイメージから炭をモチーフに描くようになりました。

現在、ウクライナとロシア、イスラエルとパレスチナが、終わりの見えない殺し合いと破壊を繰り返す中、世界中にいつ使われるかわからない核兵器が大量に存在している状況は、人々を不安と恐怖で包み込みます。もしも人間の過ちによって、世界の終りを迎えることになってしまったら、その風景をいったい誰が見るのでしょうか。はたして見る人が存在するのでしょうか。

墟(あと)は、現在の私たちがオラドゥールの廃墟を見るように、未来に現れるかもしれない世界の廃墟をイメージした作品です。

 

・技法について

 始めは炭を油絵の具で描きましたが、絵の具の光沢や粘性が炭の質感表現に適さなかったので、光沢のないアクリルガッシュで描くようになりました。特に真黒にこだわり、あらゆる黒色を試して、現在の黒色になりました。真黒を表すためには、しっかりと吸水性の下地を作ることも必要でした。一般的に、自然物を写実的に描く場合、真黒と真白を使うことはタブーですが、あえて真黒と真白のコントラストを強調するよって炭に抽象的な味わいを与えています。

また、絵に緊張感を持たせたいので、澄んだ灰色の諧調を出すため、混色をせずに灰色を表しています。普通、灰色の諧調は黒と白の混色で作りますが、それをせず、水墨画のように黒色を水で薄めたり、細い筆のハッチングの密度によって明暗の変化を作っています。豊富な筆致と諧調は、微妙な色味の変化とともに、絵に密度を与え、奥行きや深みを生み出します。

炭という具体的な物を描いていても、説明的に描くだけでは単なる炭の絵になってしまい、絵として伝えたいことが希薄になってしまいます。心に響くように具象性と抽象性のバランスを保ち、大きな画面で見る人を包み込むような表現をしたいと思っています。

 

・額について

 手作りの額は、オリジナルのものです。オラドゥールで見た、さび付いた自動車や金属のイメージがヒントになりました。さび付いたボルトは、過ぎ去った時間や閉塞感、寂寥感を表しています。伝統的に、額は窓枠としての役割があります。

つまり、絵を見ている人は、描かれた未来の廃墟を過去の窓枠から見ることになるわけです。

 P200 2022

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 P200 2021

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​<プロフィール>

 

福長弘志

​FUKUNAGA Hiroshi

1957(昭和32)年 広島県北広島町に生まれる。

1979(昭和54)年 第33回二紀展初出品(東京都美術館)以後毎回出品

1980(昭和55)年 広島大学教育学部美術科卒業 

1984(昭和59)年 第36回広島県美展大賞(広島県立美術館)’90年、’92年受賞

1989(平成 元)年 第1回広島美術大賞展佳作(福屋百貨店)

1992(平成 4)年 第1回春季二紀展新人選抜大賞(東京セントラル画廊)

            第1回青木繁大賞展入選(石橋美術館)

            広島の画家100人展出品、’02年110人展(福屋百貨店)

1993(平成 5)年 個展「FRAGMENT」(中国電力本社ロビー・大作展)

1996(平成 8)年 第50回記念二紀展同人賞(東京都美術館)、第53回展受賞

1997(平成 9)年 広島大学大学院修了

2000(平成12)年 日韓交流作品展出品(韓国・羅州)

2002(平成14)年 広島の画家110人展出品(福屋百貨店)

2004(平成16)年 個展「福長弘志洋画展」(八千代の丘美術館) 

            中国短編文学賞挿絵3回シリーズ(中国新聞)

2005(平成17)年 国際平和美術展出品(ノルウェー展、愛・地球博展)

            広島県民文化奨励賞(八千代の丘美術館)

2006(平成18)年 八千代の丘美術館第5期入館

            国際平和美術展美術展(イタリア展、長崎展、広島展)

2007(平成19)年 EARTH展(国立台湾民主記念館)

2010(平成22)年 国連事務総長夫妻へ絵画贈呈

            「時代を超えて響き合う感性」<三代展 真澄・眞子・弘志>(GLERIE青鞜)

2013(平成25)年  第67回二紀展 宮本賞(国立新美術館)

2016(平成28年) 二紀会の10人展(東京都美術館)

            第1回枕崎国際芸術賞展入選(枕崎市南溟館)

            第70回記念二紀展 委員推挙(国立新美術館)

2018(平成30)年 第1回二紀選抜台湾展(台湾国立芸術大学)

2020(令和2)年  八千代の丘美術館特別企画 福長弘志展―墟―(八千代の丘美術館)

2021(令和3)年 「四輝の風」<四代展 真澄・眞子・弘志・千紘>(ギャラリー森)

            第74回二紀展 黒田賞(国立新美術館)

 

現在  一般社団法人二紀会委員(広島支部長)  

            

作品所蔵

広島大学「記憶Ⅰ」(100S)「記憶Ⅱ」(100S)、広島大学病院「四代の整形外科医院長肖像」(F15号)

広島県教育センター「FLAGMENT」(50F)、安芸高田市「」三良坂平和美術館「FLAGMENT」(130S)、

広島市立沼田高等学校「SCENE」(20F)、広島市立広島商業高等学校「秋の光の」(20F)、

北広島町立豊平小学校「故郷に咲く」(60P)、広島女子文教女子大学「理事長の肖像」(50F)、

豊平どんぐり荘「龍頭山早春」(200P)、北広島豊平病院「流れ」(50S)、

日比野病院「黎明」(20F)

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